映画「プロメア」どこにも着地しない深読み。(後半ネタバレあり)
公開後狂った様に見ているプロメアの何がそんなに刺さるのかを考えてみた。
深読みってほど深くはない。
爽快感あって疾走感もあって好きだけど、
STORY
燃え上がるのは世界か、魂かー。
全世界の半分が焼失したその未曽有の事態の引き金となったのは、
突然変異で誕生した炎を操る人種〈バーニッシュ〉の出現だった。
あれから30年――攻撃的な一部の面々が〈マッドバーニッシュ〉を名乗り、再び世界に襲いかかる。
対バーニッシュ用の高機動救命消防隊〈バーニングレスキュー〉の燃える火消し魂を持つ新人隊員・ガロと〈マッドバーニッシュ〉のリーダー・リオ。
熱き魂がぶつかりあう、二人の戦いの結末はー。
遡ること5月、知人に勧められるまま予備知識なしで見に行ったらなんて過激な映画なんだと衝撃を受けました。時間帯的に小学生が多く、「え??大丈夫?」とものすごく不安になった。
とにかくテンポがはやく文字数多めの舞台を見ている様で見応えは抜群。展開もある意味予想できるけどそれがいい意味で大衆演劇ぽい。ただ、本当に粗筋も何もみずに行ったものだから正直展開についていくのがやっとで噛み砕く余裕がなかった。(この段階で知っているのはキャストと制作会社と脚本家のみ)なのでこの後行った友人たちには粗筋だけは読んでおくように散々言ってしまった。
疾走するように見終えたので、終わった後はなんか面白かった気はするんだけど何がどうだったのか???の状態だったので、血迷った結果そのまま次の回のチケットを確保。
二周目へ。
時間帯が程よく夜になっていた事もあり今度は大人が多かったです。
やはりストーリーがわかった上で見るのは違うなと思いながらようやく心落ち着くことが出来ました。
描かれる【30年前】
そして今日までの真実はねじ曲げられたもので、見えてる世界を疑わなかった主人公が真実に直面した時どう言う行動をとるのか、というのはテーマとしてとても好きです。
私に刺さる要素はめちゃくちゃあったわけですが、
全体として
1シーズン普通に作れてしまう内容を約2時間にまとめたのはさすがだなと思います。あの展開をこの時間に構成してしまうのはやはり中島かずき氏脚本だったからこそのまとまり間だったのではないかなと。
劇団新幹線もすごく好きですが、舞台での良い要素とアニメーションでの表現要素の良いところが最大限に引き出されている感じでした。きっと舞台で見ても面白いんだろうな、と思えるお話ですが、背景の奥行きや距離感はアニメーション映像が本当に映えていて実写映画でもこれは違うんだろうなあと。作中で「見栄を切る」動作は歌舞伎の鉄板で、早い展開の物語にメリハリをつけつつ観客に印象を残すのによい仕事をしてました。「説明的なセリフ」とそれに対するツッコミも中島節感があって、ちょっと昔の漫画とかには欄外にやたら説明的なセリフ。とかコメントがつきそうな感じがクスッときましたし、技名をいちいち名乗るが正統派ロボットアニメとか少年漫画のセオリーに則っている形のようで、物語は近未来的なロボットものであっても古典的な手法を使うことによって展開において行かれることなく見ることが出来ました。
音楽も澤野氏、すごくマッチしていて曲だけでもめちゃくちゃ良い。サントラエンドレスで聞いてしまう。
映像は言わずもがなの安定感。個人的には色の置き換えとかデフォルメの仕方すごく好きです。幾何学好きなのでよかったですが、集合体恐怖症の人にはしんどいかも。
そして個性的なキャラクター。尺の都合上詳しくは描かれていないキャラクターたちにもそれぞれの背景が想像でき、主人公と他のキャラとの関係性、他のキャラ同士の関係性。過去だけじゃなく、これからのあり用も見えるようで無駄な人が一人もいないんですよね。このお話、皆がそれぞれ正義で、基本的にはいい人なんですよね、
最後まで見てから最初に戻ると、あの時の話はこれなのかとか、伏線からの妄想も広がるわけで。
内容について
人道的な方向から思う
※ここから一部暗め(?)の内容です。
前半に書いた衝撃を受けた理由と胸糞の部分と子供大丈夫?にかかる話ですが、最初に見たとものすごくナチズムを彷彿としたんですよ。後選民思想とか。人種差別とか。
故意的に作ってるとは思うけど、子供ってそこまでの話が理解できる気がしないから、どんな見え方してるのかなってとても気になります。アニメではあるけどストーリー重視の世界観だと思うしそもそも文字数多めの映画なのである程度大きくなったほうが楽しめる映画なのではと個人的には思いました。
一番気分の悪かったシーンはプロメテックエンジンが始動した瞬間。エンジンとなるためのコンベア的なもの恐ろしかったけれど、あのポットの光ひとつひとつに全部人が居るんやろ、って思うと鳥肌でしたし、そこから聞こえる悲鳴が本当にしんどくて。山の麓でひっそりと生きる小さな集落に襲いかかり凍結していく人々の手や表情が、現段階で死んでいるわけではないにしてもポンペイ遺跡とか原爆直後の話とかとも被ったりして…なんだか私の中ではすごくリアルだったんですよね、想像が。
同じ人間で、罪のない人も罪をこしらえ、
ただ作中での、「おんなじ人間なのに…」という言葉はすごく刺さる言葉だな
ただこれだけの妄想が走り抜けても作中では一切それに対する主人公達からの説教がないんですよね。そこが良い。当事者の苦しみはあり、他に方法はなかったのか。とは問いますが、全て観客の受け取り方に委ねます。の姿勢。むしろじゃあ自分がどうするのか、と言う姿勢。めっちゃ好感度up。言葉多く語らないのほんとかっこいい。
ありがちなのは門外漢の主人公が、こんなのおかしい、間違ってると自身を正義の立場から裁くことがすごく嫌なんですよね。だまれ小童。みたいな気分になる…
後いつも思うのは、どうしても自分はかられる側として想像してしまうんですよね。
時代劇を見るなら殿や武将ではなく、最初に殺されるか飢餓や伝染病で死ぬ一兵卒や、あるいは弾圧されて死ぬ農民。実験を行うなら、観測者ではなく被験者。なので今回も移入してみてしまうのは巻き込まれた一般市民もしくは、訳のわからないまま苦しんで死んでいく側。他の方の意見も聞いてみたいなと常々思っているのですが・・・どうなんでしょう?
宗教的な方向から見る
東洋思想的なプロメアの世界観。
「炎が灰へ。灰から土へ。魂が生きる限り体は永遠。」
バーニッシュの炎と地球の核がシンクロしている。
この辺りの捉え方が東洋的、天と人とは理を媒介にして一つながりだと考える 天人合一説や五行陰陽論的でたまらんよな、と思います。心のありようがプロメアと共鳴して宇宙や地核から取り入れたフレアが溢れる。天の荒と心のありようがリンクしている。生きている限りプロメアが身を守り、魂が消える時、体を燃やし尽くす。と言う魂の捉え方も中医学の気の捉え方とすごく重なるところがあり、気を補うために食べ物を食べているのは、ものすごく東洋的世界観の人間の捉え方なのではと思ったのでもう少し掘り下げたいところ…。
ギリシャ神話にあるプロメテウスの話では、プロメテウスが天界の火を盗んで人類に与えた人類は火を基盤に文明や技術の恩恵を受けたが、ゼウスの予言通り発展した文明は戦争になる。
言わずもがな、プロメアはプロメテウスの神話から題材と名前を得ていると思っているのですが、他にどう関連づけているのか少し気になって調べていると、デウス博士のデウスは神・天帝・創造主。といった意味があるようでまさにその名前にふさわしいキーパーソン。デウスエクス・マキナは「機械仕掛けの神」と言う演出技法のようです。
まんまだな。と思いましたが、名は体を表し物語は無事収束へこの終わりの雑さというか展開、シェイクスピアとかの終わりよければすべてよし的で好きですよ。
なんちゃらケンタウリも太陽系に近い惑星として存在するようで、パルナスス号もパルナソス山もありますね。そしてノアは突然の旧約聖書。特に深い意味もないかもですけど。他のキャラクターの名前も由来に意味があるのか、まだまだ考察はつきませんが収集付かないので今後の課題に。
▶︎追記
失念していましたが、プロメテウスは人類を作ったとされる人で、デウス・プロメスはそういう意味でも神的存在なのかな〜とか思ったり。他のキャラクターの名前もどうやら神々の名前から取っているものもあるようなのでもう少し調べたいです。
最後に。
最後のシーンの後のバーニッシュ達の精神状況や社会全体の復興。バーニッシュが存在することで成り立ってきた職業や経済効果はどのようになっていくのか…想像はつきませんが、この奥行きの深さがプロメアの魅力なんでしょうね。何を切り取っても深められてしまう。
IMAX4D
すごくよかったです。
初見だと見所も多いし、動きも落ち着かないので大変ではと思いますが、是非一度体験して欲しいですね。
風吹きすぎで寒いしやたらと顔濡れます。アトラクションのようで首がむち打ちになりそうですが、ストーリーの動きとよく合っている。
そういうわけでまだまだ観たいです。